ココアがつなげる過去の記憶と未来の記憶。
冬の夜はやっぱり寒い。
こたつに入っても、まだ少し寒い。
暖房入れようか?
僕の右側に座る君に言う。
ううん、あったかいよ。
君は座椅子にもたれかかる。
大丈夫?
うん。
君はこたつから出て、キッチンへと向かう。
僕は両手をこたつの中に入れ、手と手をこすり合わせる。
寒がりな僕は、まだ寒い。
はい、これ。
君はこたつの上にココアを置く。
懐かしい。子供の頃はお袋に作ってもらってよく飲んだよ。
僕はココアの香りを嗅ぐ。
でしょ?このあいだ買ったんだ。なんか懐かしくて。
君はそう言いながら、こたつに潜り込む。
最近は全然飲んでないな。あんなに好きだったのに。
目を閉じると、あの頃の香りのまま。
私も。
君も顔を近づけて目を閉じる。
あの頃は毎日のように飲みたいと言っては、毎日のように作ってもらっていた。
甘い香りが部屋に充満する。
あの頃の記憶がいくつも蘇る。
家族の味、だな。
ココアを一口飲んで、僕は言う。
なにそれ?
君は笑う。
もう少ししたら、また毎日のように飲むようになるかもな。
まだ早いよ。ねえ、一口ちょうだい。家族の味。
君は両手でマグカップを覆う。
美味しい。
君は笑う。
僕も笑う。
すっかり大きくなった君のお腹をさすりながら、ふたりで笑った。