乾燥機の音と匂いと思い出と。
ぐるぐる回る。
音を立てて、右へ左へと回る。
乾燥機の無機質な機械音が響く。
乾燥機の音も匂いも好きなんだ。
はじめて会ったとき、僕は君にそう言った。
私も。
君は笑ってそう言った。
機械音をかき消すように語り合い、ここに来る日時を合わせて別々の洗濯物を持ってくるようになってから、ふたり一緒にふたり分の洗濯物を持ってくるようになるまで、そう時間はかからなかった。
ぐるぐる回る。
乾燥機も時間も、ぐるぐる回る。
ぐるぐる回る。
そしていつかは止まる。いつかは終わる。
僕は今でもこの音と匂いが好きだ。
君はどうだい?
止まった乾燥機から洗濯物を取り出す。
君のものはひとつもない。
ぐるぐる回って、止まって、また回す。
機械音は無機質なのに、どこか温かい。
取り出した洗濯物くらい、温かい。